Listen to the music


 19の春、当時もらっていたアルバイト料の半年分ぐらいを出して、ステレオセットを組んだ。音楽は僕にとってなくてはならない存在であったし、その音楽をできる限りいい音で聴きたいという気持ちが出てくるのは、多分自然のことだと思う。あまり知識もなかったので、色々と人を頼ったりして、なんとか完成させた。初めてそれで音を鳴らしたときの衝撃は今でも忘れない。全ての音がくっきりと、鮮やかに広がり、今まで気づかなかった音が、いたるところから聴こえてきた。今まで聴いてきたものは何だったんだ?と思わせるほど衝撃的だった。
 その頃僕はA.O.Rにどっぷりつかっていたので、レコーディング時に使うような、正確なキチキチッとした音の出るJBLのスピーカーを選んで買った。ギターのカッティングや、ライドシンバルの音が綺麗に出ることを望んでいた。本当はB&Wのものが欲しかったんだけど、ちょっと値段が高くて僕には手が出なかった。今でもたまに欲しいなと思うことはあるけれど、このスピーカーも時間が経つにつれ段々味のある音を出すようになってきた(と思えるようになってきた)し、さすがにトールボーイのスピーカーを部屋に4本も置くわけにいかない。メルセデスには憧れるけど、自分にはフォルクスワーゲンぐらいがちょうどいい、多分そんな感じだ。
 何を「いい音」とするかは、人それぞれである。オーディオの世界はこだわればいくらでもこだわれるし、金銭面もほぼ無限の広がりを見せている。真空管アンプを使ったり、1個数万のインシュレーターを置いたり、1m数十万のスピーカーケーブルを使用したり。さらに電源からのノイズを抑えるため、コンセントも病院などで使われているものを…と、言い出したら本当にきりがない。はっきりいって、実際に組んで鳴らしてみなければ、どんな音がでるかなんてさっぱりわからない。僕の場合、最初あまりにも音が硬すぎたので、生活用品店にいって適当なゴムシートを買い、それを切ってスピーカーの四隅に配置したら、驚くほど効果があった。たかだか数百円である。また、アンプをDENONではなく、もしMarantzにしていたら、また世界は大きく変わっていただろう。
 艶やかな山下達郎の歌声も、奇跡としか言いようがないスティーブ・ガッドのドラムソロも、最初から最後まで圧巻だった小沢征爾のマーラーも、どことなく不条理なアート・ペッパーのアルト・サックスも、全てこのステレオで聴いてきた。多分僕の中に、無数の組み合わせから偶然的に作られた、この音がしみこんでいっているはずだ。それがわかるのは、もう少し後のことだろうけど。


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take(take@blue-jam.com)
1981年12月23日生まれ
横浜市の端に在住
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