MAHLER SYMPHONY No.5


テンシュテット VS バーンスタイン

 マーラーの5番が病的なまでに好きだ。最初にマーラーを聴いたのは、高校生の時だったと思う。このときは1番の「巨人」に飲み込まれた。クラシックのクの字もわからなかった僕に(今だってわかっているかどうか相当怪しいものだけど)、マーラーの楽曲は壮大な宇宙を連想させた。そこでは生命が誕生し、終わりを迎え、さらにその先までもがあった。
 そして5番との運命的な出会い。なかでも有名な第4楽章のアダージェットは、この世で最も美しい旋律としか思えない。ただ、4章だけ切り取ればいいというものではない。だから、カラヤンの『アダージョ・カラヤン』なんていうのは好きになれない。例えそれがクラシックへの門戸を開いているとしても。とにかく、このアダージェットは単独として存在しているのではなく、1?3章から繋がり、そして最後5章へと続いて、初めて意味を成す。

 僕は今まで、このマーラーの5番はロンドン・フィルのテンシュテットで聴いてきた。これはかなりの偶然だった。交響楽団、指揮者の名前なんて全くわからなかった僕が、たまたまテンシュテットを手に取ったというのは、今思えば幸せな偶然だったと思う(価格が安かったというのが購入した理由だった気がする)。
 テンシュテットのマーラーは、良い意味でこぢんまりとまとまっている。聴いてて全く疲れない。くるか、くるか、と思わせておいて、結局こない。ただし、例外的に第5楽章のロンドフィナーレは、最後の音が鳴るその直前に何かが音を立てて崩れ落ちる。あれは一体何なのだろう。未だにわからない。それを除けば、本当に平和だ。生命の一生も、マーラーの宇宙も、全て僕の手の中にあった。
 そしてこの前、ついに王道とも言うべきバーンスタインの5番を購入した。聴いてみてなぜ皆が彼を賞賛するのかが、はっきりとわかった。最初の最初から、何もかもが違った。世界が、宇宙が異なっていた。今ままで決して感じることのないような、強大な、絶対的な力みたいなものを感じた。アダージェットも文句なし。まさにマーラーを振るために生まれてきたマエストロ。ウィーン・フィルもこれ以上何を求めるのかと言わんばかりの演奏。ただし、テンシュテットみたいに、2回続けて聴こうなんていう気分には絶対にならない。全ての演奏が終わった後も、かなりの時間余韻が残る。最初はあまりにテンシュテットに慣れ親しんできたため、バーンスタインを珍しく感じているだけなのかと思っていた。でも、何度聴いても受ける印象は変わらなかった。
 個人的にどちらが好きなのかと言われればかなり迷う。優劣とか、そういう次元の話ではないし、両者とも文句なく素晴らしい。しかし、もしどちらか1つに絞れと言われたら、僕は長年聴いてきたテンシュテットではなくバーンスタインを選ぶと思う。というのも、本当に圧倒的なのだ。その圧倒的な力は時に負担になることもあるのだろうけれど、僕は一瞬の煌めきを諦めることは決してできない。一度この世界を知ってしまったら、もう元には戻れない。

マーラー:交響曲第5番
 テンシュテット(ロンドン・フィル)
 バーンスタイン(ウィーン・フィル)


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コメント(2)

 はじめまして。西尾君のブログ(髭剃りの話)でお見かけして以来、拝読させて頂いております。
 わたしも、マーラー好きです。書いてらっしゃるCD、まさに私が15年程前(?)買ったのと同じCDです。ちょっとびっくりしました。
 私の場合、アダージェットが紳士服(ダーバン?)のCMに使われてて、余りに美しい旋律だったので、すぐCD店に買いに行きました。
 私はクラシック好きだけど、全く知識が無いので、無茶苦茶な買い方をしています。タケさんはかなり造詣が深いようですが。初心者にこれはお勧めみたいなのがありましたら、またブログに書いて下さい。参考にして勉強したいと思います。
 あぁ、それからアダージェット単独はダメですか。私は自分の葬式にこれをエンドレスで流して貰うように遺言に書いとこうと思ったんですけど(笑)。あの美しい旋律で、私の生前の悪事を忘れさせて、参列者の涙を誘う為に悪用しようと思ってたんですが(笑)。

>りさん
はじめまして。
よく西尾君のブログにコメント書かれてますよね。見てくださってありがとうございます。凄く嬉しいです。

僕も別にクラシックに詳しいわけではないし、結構めちゃくちゃな聴き方をしてます。それこそドラマやCMで使われていて気になったから買ったとか、何となくふらりとCDショップのクラシックコーナーに入ってフィーチャーされてるのを衝動買いとか。買ったのに全然聴かないCDとかもありますし…でもたまに引っ張り出して聴いてみると新たな発見があったりして。こんな僕ですが、また何かあったら紹介するようにしますね。

アダージェットは切り出してもその美しさに変わりはないと思うけど、僕だったら、もし葬式に使うとしてもやはり第1楽章から流したいですね。参列者の涙を誘うというよりは、自分自身を弔う(?)みたいな感じで。その場合、バーンスタインよりテンシュテットの方がいいかな。今のところ多分バーンスタインに送られるほど立派な人生を歩んでいないので…。

くだらないことばかり書いてますが、これからもたまに覗いてもらえれば幸いです。

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横浜市の端に在住
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