僕はこれまで23年間、大阪の3年、アメリカでの3年を除けば、区は3回変わったもののずっと横浜市に住んできた。横浜は良くも悪くも東京のベッドタウンだが、高校以降通学先がずっと東京だったせいなのかもしれないけど、東京も自分のホームのような感覚というか、東京と言えば、おのずと横浜もそこに含まれているような感じだった。
そして就職をするにあたり、最初は絶対東京だよみたいなこだわりがあったものの、進めていくうちにそんな悠長なことも言ってられず、自分が納得のいく仕事をするために勤務地のこだわりを捨てざるを得なくなった。
ということで、現実的にもうじき関東を離れる可能性がかなりあるわけで、そう考えると今のうちに東京の恩恵に少しでも与っておきたい。何だかんだ言って東京は日本の首都なのである。と、考えたのかどうかは自分でも今ひとつわからないんだけど、今日は国立西洋美術館に行って、「ジョルジュ・ド・ラ・トゥール―光と闇の世界」を見てきた。
「光」と言えばフェルメールが有名な気もするけど、ここで両者を対比させることにそれほど意味はないと僕は思う。まあそんなのは専門家がやってくれればいいわけで、素人の僕はただただ絵を見つめるしかなかった。
作品数が少ないせいか一貫性を感じられ、全体的に凄く良かった(模作はいらなかったけど)。その中でも特に良かったのが≪蚤をとる女≫。そして今回生まれて初めて、この絵を前にして、絵の前で足が動かなくなるということを経験した。なんだかよくわからないけど、この絵のろうそくの灯が僕にとって特別な光のような気がした。ここから離れるとその光が消えてしまうんじゃないかと。
最初はそこまで特別なものを感じなかったものの、次の絵を見ている最中になんとなく気になり、順路に逆らって再び見に行った。で、そこからはもう直立不動。最初はなんでこの絵なんだろう?何があるのだろうか?とか色々と考えていたんだけど、途中からもうどうでもよくなった。ただただ呆然とこの絵を見つめていた。目の前を過ぎる人々と、足の疲れだけが僕に時間の経過を教えてくれた。もしそれらがなかったら、僕はいつまでもこの絵を見続けていたのではないかと思う。それは永遠と呼ぶに相応しい時間だった。
多分この絵の前に1時間、あるいはそれ以上いたと思う。相当迷惑な客だったに違いない。ごめんなさい。でも本当に全然足が動かなかった。動きたくなかったし、動かない方がいいと思った。何かが動こうという意識を放棄させていた。まるでそこが僕の定位置であるかのように。その絵を見つめているのが当然かのように。
次は横浜美術館のルーヴルかな。アングル!トルコ風呂!