人は、一度巡り合った人と二度と別れることはできない。なぜなら人間には記憶という能力があり、そして否が応にも記憶とともに現在を生きているからである。(本文より)
前に読んだ彼の短編集はあまり面白くなかったけど、この本は良かった。構成はシンプルであるものの、どことなく心に響くものがある。僕という人間を構成しているブロックの1つを、スコーンと抜き出されたかのような感覚に襲われた。
僕らの現在というのは過去の積み重ねで築かれていて、でも現在なんて一瞬にして過去になってしまうわけで。じゃあ「今」って何だろうというか、そういう時系列を越えたものがあるということを提示してくれた気がする。
もし本当に一度出会った人と二度と別れることができないというのなら、それは悲劇でもあり、何物にも代え難い喜びでもあるだろうと思う。多分ね。