Gaucho


gaucho.jpgGaucho/Steely Dan
 もしあなたが究極の完成された音楽を聴きたいと思うなら、後期のスティーリー・ダンを聴けばいい。好みは分かれるだろうが、少なくとも広い意味でのポップスにおいて、彼らより上の音楽をやったものはいない。
 もしあなたが一流ミュージシャン達の最高のプレイを聴きたいと思うなら、この『Gaucho』を聴けばいい。これほどまでにボーカルがかすむ音楽を、僕は聴いたことがない。

 とにかく圧倒的な完成度。1980年にこれをやられちゃ、もう誰もついていけない。彼らの中では、ここで追い求めていた音楽が終わった。音楽界という広いフィールドにおいても、このアルバムでひとつの完成形に達したと思う。まさしくポップスの終焉。よくこのアルバムが出た後、他のミュージシャン達は平気な顔をして音楽を続けようと思ったよな、と本気で思えるほどの傑作。
 テクニカルな話をすると、録音がめちゃくちゃいい。多分僕の持ってるCDの中で最高だと思う。お金をかければかけるだけいい音で聴ける1枚。自分の10万程度のアンプ、CDプレーヤーではちょっと厳しいかなと感じることが多々ある。いつか最高の環境でこのアルバムを再生してみたい。

 楽曲については、ドナルド・フェイゲンのコンピュータミュージックへの抵抗がこれでもかっていうほど聴ける。最初なんとなく打ち込みの代用としてミュージシャンを起用している感じもしたんだけど、繰り返し聴いているうちにそれは表層的なことであったことに気づいた。やっぱり人間じゃなければ出せないグルーヴっていうのがあって、彼はそれを求めているのがわかる。
 <Babylon Sisters>では、チャック・レイニーとバーナード・パーディーという最高のリズム隊。ドラムの話ばかりで申し訳ないが、スティーブ・ガッドやジェフ・ポーカロ、リック・マロッタも本当にいい味を出している。デビッド・サンボーンやトム・スコット、マイケル・ブレッカーなどのホーンも適材適所という感じで、見事フェイゲンの要求に応えている。全てが究極的。<Third World Man>は前作『AJA』に収録される予定だったとかで雰囲気が少し違うが、それでもラリー・カールトンの味のあるソロが聴けるところがいかにもスティーリー・ダン。
 そして行き着くところに行き着いちゃったので、彼らはこれで音楽活動をやめる(他にも色々な事情があるのだが)。

 本当に完璧な音楽だし、僕の知る限りこれより完成度の高い音楽をやったアルバムはない。でもそれが必ずしもよいのかと言われれば、実はそんなこともない。
 このアルバムを聴くと、もうこの上はないということがはっきりとわかる。どんなものでも、ピークに達したらあとは落ちるだけ。そのことを受け入れられたとき初めて、このアルバムの本当の凄さを理解できるし、それと同時にあとは輝きを失った世界が待っているだけになる。一応スティーリー・ダンは2000年に復活してグラミー賞をとったりもしているのだが、これらの作品に比べるとはっきりいって目も当てられない内容である。
 まあ、一度ぐらいは頂点を見ておいた方がいいかもしれない。僕は生きている間にこのアルバムに出会えたことを心から感謝している。


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