TIME TUNNEL/角松敏生


timetunnel.jpgTIME TUNNEL/角松敏生
 1993年に音楽活動を"凍結"、そして5年の月日を経て"解凍"した角松の復帰第一作。彼の作品の中では、おそらく今までで一番聴いてきた。アルバムアーティスト角松敏生の真価をいきなり見せられたアルバムであり、僕にとってあまりにも衝撃的な1枚であった。

 新生角松の全てがここにあると言っていいと思う。

 CDだとこういう表現はないけれど、もしレコードならば、盤面がすり切れるほど聴いたアルバム。全曲紹介でいきたいと思います。

 1曲目、オープニングの<TIME TUNNEL>。ポップスアルバムでいきなりインストっていうのが、当時高校2年生だった僕にはすごく新鮮だった。渡辺香津美のギターソロ、山木秀夫と青木智仁のリズム隊、そして度肝を抜く角松のコーラス。この美しさに心底惚れた。まるでライブの始まりのようなイントロダクションは、まさに新たな時代の幕開けを予感させる曲。

 音楽雑誌にも書かれていたが、ここから2曲は角松の復帰を祝う曲が続く。ジェリー・ヘイとゲイリー・グラントのコンビを含むトランペット3本に、トロンボーン、サックス2本と、ホーンが計6本。分厚いサウンドが「ようこそ」と角松を迎える。<Lunafairymiena>はまさにそんな歓迎ソングで、今度は夜が来ても終わらないんだということを予感させてくれる。<SHIBUYA>は沼澤尚の真骨頂だろう。天性のグルーヴ。歌詞がすごく良くて、ふと口ずさんでしまう。サックスソロには前述のホーン隊ではなく、マイケル・パウロを起用。

 ぐっと落ち着いて<匂い>。匂いって人の記憶に結びついているよね、という話だった気がする。やや文学的とも言って良い歌詞に、どことなく懐かしさを感じさせられる。さらに落ち着いて<Rendezvous>。ポップスのお手本のような曲であり、スタンダードで丁寧な曲作りの美しさがいい。バックは打ち込みだけど、数原晋がフリューゲルソロを吹いてるところがさすが。

 バンドソングの<ALRIGHT>は、ギターの浅野祥之、ベースの青木智仁、キーボードの小林信吾、ドラムの江口信夫、この4人でスタジオに入って、「いっせいの」とレコーディングを行ったとか。ベースが強調されているので音は軽くないし、意味深な歌詞からは、過去が重すぎるけれどそれでも何とか先に進みたい、といった角松の切実な想いを歌っているのではないかと、今は感じる。

 沼澤尚が大活躍の<時計>。このアルバムのメインフィーチャー曲。時間という、4次元ではないかと捉えられているものというか概念に、角松は歌で挑んだ。聞き手は歌詞以上のものを見せつけられるだろう。パーカッションの大儀見元が素晴らしいが、惜しむらくはちょっとピコピコうるさいことかな。

 夜明けのやさしさに包まれる<何もない夜>。一気に曲のもつスケールが広くなる。『あるがままに』でも見られたスタイルがここでも登場しており、この後でも度々聞くことができる。彼の十八番と言ってもいいのだろう。

 <風のあやぐ>は宮古島出身のアーティスト下地暁とのデュエット。ライブで何回も歌っているから、角松お気に入りなのだろう。宮本文昭のオーボエソロが聴ける貴重な1曲。多くのデュエットがそうであるように、角松の歌唱力(もしくは彼の歌が持つ力)をまざまざと見せつけるような曲でもあり、絶対にうもれないオンリーワンを持っているアーティストなんだということを再確認させられる。

 そして解凍シングル、すなわち復帰第一作の<Realize>。前を見続けている歌詞に、いつだって元気をもらってきた。「変わらないものを見つけて」。みんな角松が帰ってくるのを待っていたんだよ。信じる人たちの期待に応えてくれたあなたに、自分のやるべきことを認識して、しっかりとその実現に向けて動き続けているあなたに、心からのありがとうを伝えたい。

 最後は<崩壊の前日>。神戸の大震災がきっかけで作られた曲。見慣れた景色がある日突然ほんの一瞬で崩れ去ってしまう。二度と元には戻れない。しかもそれは、偶然としか思えない要素が決定的な違いを作り出す。僕たちはそんな儚さと、やるせなさと一緒に生き続けるしかないのだろうか。ポンタ先生のドラムが絶品。カーク・ウェイラムとラリー・カールトンが涙を流す。

 というわけで全11曲、復帰を飾るにはこれ以上ない出来となっている。もし僕がここまでこだわる角松敏生に少しでも興味を持ってくれた人がいるなら、まずはこのアルバムを聴いてみることをオススメします。彼はこの後さらなる展開をみせていくことになるが、角松の核となる全てがつまっている1枚。


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