柳谷先生


 たまたまテレビをつけたら、柳谷晃先生が出てて心底びっくりしました。まさか高校の時に数学を習った先生が情熱大陸に出るとは…!。

 僕の通っていた高校は良い意味でも悪い意味でも変わった先生が多かったけれど、柳谷さん(どういうわけか、僕らは教師のことをさん付けで呼んでいた)はその中でもトップ3に入るぐらい変わってた。担当教科は数Aだったけれど、はっきり言って数Aを教えてもらった記憶は全くない。数Aなので集合や確率が学習要領のはずだが、哲学のような話と、日常的な事象の確率の話が授業内容のほとんどだったと思う。受験勉強から解放されたばかりの15歳は、漠然と数学と哲学は深い関係があるのか、ぐらいしかわからなかった。

 その後は残念ながら柳谷さんに教わる機会がなかったのだけれど、大学のキャンパスでもたまに会うことがあって(大学でも授業をもっている)、「やあ」と不敵な笑みを浮かべながら声をかけてくれた。何百人、何千人と教え子がいるはずなのに、特にクラスで目立っていたわけでもない僕のことを覚えてくれていたことはすごく嬉しかった。

 今思えばだけれど、柳谷さんは常に物事の本質を説こうとしていたような気がする。しかも、そんなこと高校生に話してもわからないだろうという不条理を抱えながら。「人という字は文系が理系に寄りかかって生きているのを表している」とか「バカは生きていてはいけない」とか、過激な発言をしながらも、実は世界と自分の立ち位置をきちんと見極めている人なんだなと、改めて尊敬する。ちなみに後者の発言のフォローをすると、これはノブレス・オブリージュの話をしていて、人はそれぞれ能力を社会に還元することが使命なんだよ、ということをこれから未来を担う僕らに向けて言っていたのだと(僕は勝手に)解釈している。この先生に数学を教えてもらえたのは本当に幸運だったと思う。

 世の中のほとんどのことは数式で表せる。数学者しかり、物理学者しかり、経済学者しかり。数学という学問に触れる資格を手にした者は皆、とてもじゃないけど一言では説明できないことを、数式で表現しようと人生を捧げてきている。誰が言ったのか忘れてしまったけれど(あるいは柳谷さんかもしれないが)、数学的に正しいことはエレガントで美しい場合が多い。これは理系人間なら間違いなく誰しもが惹かれたこと。もちろん、僕もそのうちの一人。ロケットは数式で飛ぶし、人の行動までもが数式で表すことが可能。これにロマンを感じず、何に感じるというのだ。もちろん、番組の中でも言っていたが、その数式の根底には人間がいる。数式というのは時に冷たいものだけれど、そのことは忘れてはいけない。

 自分が今、無線通信(確率と統計の最たるもの)絡みの仕事をしているのは、もしかしたら高校時代に柳谷さんに出会ったことも関係しているのかもしれない。一見、関係がなさそうなに思えても、何がどこで繋がっているかは、パッと見ではわからない。意外と、シンプルでエレガントな数式で表すことができたりしてね。


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