Sunken Condos/Donald Fagen


sunken_condos.jpgSunken Condos/Donald Fagen

 ドナルド・フェイゲンの6年ぶりソロアルバム。Steely Danとして『Gaucho』で頂点を極めて以来活動が大人しくなったイメージがあるけれど、Steely Danでその後2作出してるし、ソロもこれで4枚目。30年で6枚と、多いのか少ないのかさっぱり分からないのだけど、Steely Danの絶頂期に生まれてなかった自分としてはこうしてリアルタイムで、フェイゲンの音楽に触れられることを喜びたい。

 そして願望ではなく、こう確信したい。これは『The Nightfly』以降、ここ30年の彼の最高傑作ではないか、と。

 歴史的な名盤である『Nightfly』以降、『Kamakirirad』そして前作『Morph the Cat』と、ソロ3部作なんて呼ばれ方をしていて、てっきり完結(=ソロ作の最後)だと思っていたため、今回の新作はもちろん嬉しいがそれ以上に驚きもあった。

 まず気づかされるのが音の変化。Steely DanというかDonald Fagenには重厚かつ緻密なサウンドというのを自然と期待してしまうが、それがさらりと裏切られる。カチカチッとした、そこそこのオーディオじゃないと綺麗に鳴らしきれないだろうなという高音も、本作ではそこまで要求されておらず、音が軽いという表現は正しくないが、硬さがとれている。シンセやギターの音の歪ませ方はそんなに変わりはないかな。これは、長年エンジニアを務めてきたRoger Nicholsが昨年他界した影響もあるのかとも思ったが、前ソロ作でも器用されてないためあまり関係はないのかもしれない(Elliot Scheinerは前作同様参加しているようだけれど)。しかし、それで彼の音楽の魅力が損なわれるのかというと、そうではなく、むしろ冒頭で述べたとおり過去30年の最高傑作とすら感じさせるのが面白い。Michael Leonheartとの共同プロデュース作となったこのアルバムは、64歳のフェイゲンが今なお、新たな音楽を作ろうとしていているのがひしひしと伝わってくる。

 1曲目の<Silky Thinkg>はこのアルバムそのものだろう。コンドミニアムが海底に沈んでいるタイトルそのままのジャケットが本作のコンセプトであるならば、more light, more light...とは地上の光を願っているのか、それは暗喩なのか、それともたいした意味はないのだろうか。続く<I'm Not the Same Without You>なんかは過去ないタイプのキャッチーさで、すごく格好良い。Issac Hayesの<Out of the Ghetto>もさらりとカバー。ファンクチューンもさらりとクールなSteely Danサウンドに。<Miss Marlene>も非常にフェイゲンらしい曲調。コーラスワークが秀逸で、フェイゲンのボーカルがとんでもなく素晴らしいんじゃないかとすら思えてくる。アルバム通した全体のバランスの良さ、完成度の高さは、間違いなく『The Nightflight』以降最高。

 ミュージシャンは新生Steely Danバンド(と言ってもずいぶん経つが)で固めてくると思いきや、Jon Heringtonなど一部は残っているもののほぼ一新。ドラムのEarl Cooke Jrとは誰だと思ったら、なんとMichael Leonheart。インタビューでフェイゲンは、サウンドチェックのために少し叩かせたら非常に良かったので全曲叩いてもらったと語っているが、もはやMichaelの本職がよくわからない。トランペッターだと思うが、キーボードもコーラスもこなす上、ドラムも叩きそれがキース・カーロックよりもこのアルバムに相応しいとの評価をフェイゲンから受けてしまう。"soulful, old school feel"なドラムとのことだが、スティーブ・ガッド、エド・グリーン、バーナード・パーディー、ジェフ・ポーカロと世界最高のドラマー達を器用してきたドナルド・フェイゲンにだ。そして極めつけは、これまでもミュージシャンとしてSteely Danに参加してきているが、ついに共同プロデューサーという形でレコーディングを実現。まだ若干38歳、この才能は音楽界の至宝なのかもしれない。

 日本はもちろんのこと世界でも音楽(CDリリース)がビジネスとして成り立たないと音を上げるミュージシャンが多い中、フェイゲンは至ってクールにそしてシンプルに振る舞っている。それでも音楽を楽しむしかないと。僕らも大好きな音楽がこれから先いつまで楽しめるのかわからないという、いささかの心配はあるけれど、これも気にしてても仕方ないので、今あるものを心行くまで楽しむしかない。まあ、きっと時代が必要としたらそこに生まれてくるのだろう。


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